アトピー性皮膚炎
アトピー性皮膚炎とは皮膚に湿疹や炎症などが起こります。アレルギーを起こしやすい体質の人、皮膚が弱い人に現れやすい症状です。原因や症状はお子さんによって異なり、薬を塗ったり、服用したりするだけで治すことはできません。
アトピー性皮膚炎のお子さんの多くはドライスキンという皮膚が乾燥しやすい体質をもっていたり、アレルギーを起こしやすい体質(アトピー素因)をもっていたりします。アトピー性皮膚炎の症状は良くなったり悪くなったりを繰り返し、慢性化し、症状が続くことが特徴です。現在のところはっきりした原因や特効薬は見つかっていません。
スキンケア
アトピー性皮膚炎の治療で一番大切なのは毎日のスキンケア(お肌の手入れ)です。汗をかいたり、よだれや食べ物が顔についたりしたら、すぐ洗い流して保湿剤を塗りましょう。お風呂にはいったら、肌が乾ききらないうちに保湿剤を塗りましょう。
石けん
石けんやシャンプーを使ってもかまいません。せっけんはよく泡立てて、なでるようにやさしく洗い、そのあとはよく流してください。入浴はぬるめのお湯がおすすめです。
かゆい
アトピー性皮膚炎は、かゆい…かゆいから掻く…掻くと傷がつく…傷がつくとよけいかゆい…また掻く…という悪循環をやめないと、ますます悪くなるばかりです。
そこで、
- 爪は短く切っておく
- 厚着にしない
- チクチクする衣類は避ける
- 寝ているときに暖めすぎない
※かゆみ止めの薬を飲むこともあります。
指示通り軟膏を塗る
指示された軟膏を、指示された部位に、指示された回数だけ、毎日かかさずに塗ることが大切です。
※気まぐれに塗ったり、塗らなかったり、よくなったから、とやめてみたり、市販の薬を塗ってみたり、では、なかなか治りません。
「強い軟膏」恐怖症
ステロイド薬(副腎皮質ホルモン)の入った、いわゆる「強い軟膏」はアトピー性皮膚炎にたいへん効果があり、ステロイド薬なしで治療するのは無理な相談です。医師はステロイド薬の長所も短所もよく理解して使っていますので、指示通りに塗れば副作用の心配はありません。
アトピー性皮膚炎の治療の方法
アトピー性皮膚炎の治療は、
- 薬物療法
- スキンケア
- 悪化因子への対策
が基本です。
薬物療法は「外用療法(塗り薬による治療)」と「全身療法(飲み薬や注射など)」に大別されます。
外用療法には、ステロイド外用薬、その他の抗炎症外用薬、保湿剤などがあります。
全身療法には、飲み薬や注射、紫外線を使って行う治療などがあります。
アトピー性皮膚炎に用いられる外用薬
ステロイド外用薬 |
皮膚の炎症を抑える 必要な量を適切な期間、使用することが大切 5段階に分類(個々の皮疹の重症度に見合ったランクを選択) |
---|---|
その他の 抗炎症外用薬 |
プロトピック軟膏 コレクチム軟膏 モイゼルト軟膏 3種類とも、炎症とかゆみを抑える効果がある |
保湿剤 | 皮膚の保湿力を高め、バリア機能を改善する |
また、適切な治療を行っていても効果が不十分な場合、以下に示すような生物学的製剤(注射薬)や経口JAK阻害薬(飲み薬)による治療もあります。
アトピー性皮膚炎に用いられる生物学的製剤(皮下注射薬)
それぞれの製品ごとに適応条件があります。
製品名 | 対象年齢 | 注射の間隔 | 特徴 |
---|---|---|---|
デュピクセント | 生後6ヶ月以上(体重5㎏以上) (当院では、医療証をお持ちの小学生以上の方を対象とします) |
2~4週間隔 | 炎症、かゆみ、バリア機能の低下に効果 |
アドトラーザ | 15歳以上 (当院では、医療証をお持ちの方を対象とします) |
2週間隔 | 皮膚の炎症をやわらげ、かゆみ、湿疹を改善 |
ミチーガ | 6歳以上 (当院では、医療証をお持ちの小学生以上の方を対象とします) |
4週間隔 | かゆみの抑制効果が高い |
アトピー性皮膚炎に用いられる経口JAK阻害薬(飲み薬)
それぞれの製品ごとに適応条件があります。
製品名 | 対象 | 回数 | その他 |
---|---|---|---|
オルミエント錠 | 15歳以上 | 1日1回内服 | 投与前、投与中の定期検査が必要 |
リンヴォック錠 | 12歳以上 | 1日1回内服 | |
サイバインコ錠 | 12歳以上 | 1日1回内服 |
当院では、「外用療法(塗り薬による治療)」に加えて、「生物学製剤(デュピクセント)」と「光線療法(紫外線療法)」を取り入れています。
どちらの治療も定期的な通院が必要です。
デュピクセント皮下注について
デュピクセントの作用
免疫細胞が産生するIL-4とIL-13という物質がアトピー性皮膚炎に大きく関わっています。
デュピクセントは、IL-4とIL-13をピンポイントにおさえるお薬です。
IL-4とIL-13をおさえることで、アトピー性皮膚炎の要因である「炎症」「かゆみ」「バリア機能の低下」のすべてに対する効果が期待できるといわれています。
対象となる方
今までの治療法で十分な効果が得られない、生後6ヶ月以上のアトピー性皮膚炎のお子さん
当院では医療証をお持ちの小学生以上の方を対象とします。
現在の皮膚の状態を確認させていただき、デュピクセントの適応条件を満たしている方が治療対象となります。
投与方法
デュピクセントは皮下に注射するお薬です。
小児の患者さんの場合、体重によって投与量や投与間隔、注意点などが異なります。
また、「医療機関に通って医師が注射する方法」と「自己注射」があります。
「自己注射」は、あらかじめ医師の指導を受け、ご自宅で患者さん自身やそのご家族が注射を行う方法です。
当院では、医師が注射を行いますので、定期的に通院が必要になります。
治療開始までの流れ
①デュピクセントによる治療を希望される方は、当院受付へご連絡ください。(院長の外来の予約)
平日)9:30~11:00 15:00~17:30 水曜日・木曜日以外
土曜)14:30~16:30
②これまでの治療の経過や現在の皮膚の状態から、デュピクセントの適応となるかを確認します。
③適応条件を満たしている場合、デュピクセントについてご説明後、予約をお取りします。
(薬剤を取り寄せるため、初回説明当日に治療を開始することはできません。)
当日の持ち物
診察券(お持ちの方)、保険証、医療証、お薬手帳、母子手帳
※お薬手帳のほか、これまでの治療の経過がわかるものがあればお持ちください。
※注射の予約日を設定するにあたり、予防接種との間隔を考慮する必要があるため、母子手帳を必ずお持ちください。
ご不明な点がありましたら、ご相談ください。
光線療法について
紫外線治療器(exciplex308)による光線療法を導入しました。
光線療法とは
紫外線のUVB(中波長紫外線)のうち、治療に適する有効な波長だけを取り出した治療法です。
治療効果が高い紫外線を照射することで、さまざまな皮膚疾患の症状の改善が期待できます。
アトピー性皮膚炎に対しては、紫外線による免疫抑制作用で過剰な免疫反応を鎮静化させ、かゆみを抑制する効果があります。
外用薬による治療やスキンケアに加えて光線療法を追加することで、高い治療効果が期待できると言われています。
まれですが、色素沈着や水泡形成を起こす可能性があります。
対象となる方
当面の間、生後6ヶ月以上の医療証をお持ちのお子さんを対象として行います。
保険適応疾患は、アトピー性皮膚炎、円形脱毛症、尋常性白斑、尋常性乾癬などです。
初回の予約
電話または受付窓口で予約をお取りください(ネット予約はできません)。
初回診察時に光線療法についてご説明いたします。
医師が可能と判断した場合、初回説明当日から光線療法を開始することもできます。
2回目以降の予約
診察・光線療法終了後に次回の予約をお取りします。
光線療法の予約時間
平日)9:30~11:00 15:00~17:30(木曜は午前のみ)
土曜)14:30~16:30
方法・スケジュール
週に1回(状態により週に2回)、患部にのみ短時間照射します(1ヶ所あたり数秒)
光線療法開始後は、照射後の皮膚の状態を確認しながら照射量を調節していきます。
痛みはありません。
照射後は、入浴などの日常生活は普段と変わりなく行えます。
※光線療法の前は患部に日焼け止めを使用せずに来院してください(照射後は使用可能です)。
光線療法を受けられない方
日光・紫外線過敏症の方は、光線療法を受けられません。
日焼けで赤くなりやすい方は、必ず医師にご相談ください。
使用例
ご不明な点がありましたら、ご相談ください。
治療のこころがまえ
アトピー性皮膚炎を治すためには、次のようなこころがまえを、いつまでも忘れずに!
- 忍耐強く アトピー性皮膚炎をあっという間に治すことはできません。よくなっても手をぬかず、一時的に悪くなってもがっかりしないで、何年も忍耐強く頑張りましょう。
- 定期的に受診 症状が変われば治療も変わっていきます。必ず定期的に受診してください。「薬だけください」という姿勢では治りません。
- 自己流は失敗のもと よくなったので塗るのを止めた、悪くなったので市販の薬を使った、毎日薬を使うのはよくないと思ったので減らした、など自分の判断で治療を変えるのは失敗のもとです。わからないことは、必ず医師に相談してください。
- 食物アレルギーか? アトピー性皮膚炎の子がみんな食物アレルギーとはかぎりません。医師と相談して、必要なら検査を受けましょう。
- よけいなお世話 親切な人が、あれがいい、これがいいと教えてくれることがあります。ついフラフラッとなりがちですが、浮気は禁物。医師に相談しましょう。
監修者情報
及川 茂輝 院⻑
東京大学文学部大学院終了後、福島県立医科大学医学部に入学。その後、神奈川県立こども医療センター、国立病院機構横浜医療センター、横浜市立大学医学部付属病院での勤務を歴任。「あかちゃんとこどものために世界で一番よいクリニックを創る」ことを使命とし、育児に悩むお父様、お母様の気持ちに寄り添う医師として診療を行う。・日本小児科学会認定 小児科専門医
・日本アレルギー学会認定 アレルギー専門医